好決算を見て飛びついた小型株が、翌日ストップ安になった。
含み損、マイナス70万円。
その日の晩飯の味が、しなかった。
妻が作ってくれたご飯を食べているはずなのに、何を食べているのかわからない。味覚が消えたんじゃない。頭の中が全部、株価で埋まっていた。
整備士15年。エンジンの異音には0.1秒で気づける僕が、自分の家計のエンジンブローには気づけなかった。これは、僕が個別株で大やけどして、新NISAの積立投資にたどり着くまでの話だ。
好決算に飛びついた日
きっかけは、SNSで流れてきた決算情報だった。
ある小型株が好決算を発表。株価は急騰していて、タイムラインは「まだ間に合う」「これは10倍株」と盛り上がっていた。
冷静に考えれば、すでに上がった株を買うのは、中古車を新車以上の値段で買うようなものだ。整備士なら絶対にやらない判断。でもあの瞬間、僕は整備士じゃなかった。ただの欲に目がくらんだ素人だった。
「今買わないと乗り遅れる」
その焦りだけで、買った。いわゆるジャンピングキャッチ。天井で掴んだ。
翌日、ストップ安
翌朝、スマホを開いた瞬間に血の気が引いた。
ストップ安。売りたくても売れない。板を見ても買い手がいない。数字がどんどん下がっていくのをただ眺めているだけだった。
含み損:マイナス70万円
チャイルドシート10台分。家族旅行なら何回分か。
そんな計算が頭をグルグル回って止まらなかった。
食べ物の味がしなくなった
一番きつかったのは、日常が壊れたことだ。
仕事中も株価が気になって集中できない。スマホを開いては含み損を確認して、閉じて、また開く。整備士が目の前のエンジンに集中できないのは、致命的だ。お客さんの車を預かっているのに、頭の中は自分の含み損のことばかり。
家に帰っても同じだった。
妻が作ってくれた晩ご飯を食べても味がしない。息子が笑いかけてきても、上の空。「パパどうしたの?」と聞かれるわけじゃない。まだ1歳だから。でもあの頃の僕は、家にいるのに家族といなかった。
体は食卓にあるのに、心はチャートの中にあった。
整備士なのに「点検」を怠っていた
冷静になって振り返ると、僕は整備士として恥ずかしいミスをしていた。
車の整備には鉄則がある。「異音がしたら、まず止める」。走り続けたら壊れる。エンジンが焼き付く前に止めて、原因を調べて、直してから走り出す。
でも僕は個別株で異音がしていたのに走り続けた。
SNSの煽りに乗って買った時点 → 異音
「そのうち戻る」と思った時点 → エンジン警告灯
食べ物の味がしなくなった時点 → エンジンブロー
「止める」という判断ができなかった。これが、僕の最大の失敗だった。
個別株をやめて、新NISAの積立に切り替えた
結局、損切りした。70万円の授業料を払って、個別株から撤退した。
そこからしばらくは投資そのものが怖くなった。でも整備士としての冷静さが戻ってきたとき、こう考えた。
「投資が悪いんじゃない。僕のやり方が悪かっただけだ」
車が事故を起こしたのは車のせいじゃない。運転の仕方が悪かっただけだ。なら、運転の仕方を変えればいい。
そこでたどり着いたのが、新NISAでのインデックス積立投資だった。
S&P500とオルカンに月6万円
今は新NISAで、S&P500とオールカントリー(オルカン)に毎月6万円を積み立てている。
個別株との違いを整備士的に言うなら、こうだ。
個別株 → 自分でエンジンを組む(魔改造)
インデックス投資 → メーカー純正エンジンをそのまま載せる
魔改造は当たればすごい。でも外れたらエンジンブローする。素人が手を出すものじゃなかった。
一方、インデックス投資は「世界経済」とか「アメリカのトップ500社」という、すでに完成されたエンジンに乗っかるだけだ。自分でいじる必要がない。純正パーツで組まれた信頼性の高いエンジンを、毎月コツコツ回し続ける。それだけでいい。
チャートを見なくなった日常
積立投資に切り替えてから、生活が変わった。
まず、スマホで株価を見なくなった。毎月6万円が自動で引き落とされて、自動で買い付けされる。僕がやることは何もない。
ただ、「何もしない」と言っても、家計全体の流れは把握しておく必要がある。双子が生まれたら出費は確実に増える。どこにいくら使っているのか、見えていないと不安になる。
僕はマネーフォワードMEを使って、銀行口座・クレジットカード・証券口座を全部連携している。整備士で言えば、ダッシュボードの計器類を一画面に集約しているようなものだ。燃料計・水温計・回転数をバラバラに確認する車はない。家計も同じで、全部まとめて見えるようにしておけば、異常があればすぐ気づける。
チャートを毎日見る生活から、月1回マネーフォワードで家計を確認するだけの生活へ。これだけで、お金の不安はかなり減った。
そして何より、家族の時間を満喫できるようになった。
晩ご飯の味がする。息子と遊ぶ時間が楽しい。妻の話をちゃんと聞ける。お金に少し余裕ができたこと以上に、「頭の中に株価がない」という余裕が大きかった。
70万円は失った。でもそのおかげで、家族と過ごす時間を取り戻せた。
個別株と積立投資の違い
| 個別株(当時の僕) | 積立投資(今の僕) | |
|---|---|---|
| やること | 銘柄選び・タイミング判断 | 毎月自動で積立 |
| 日常への影響 | 常にチャートが気になる | 何もしない |
| 整備士的に | 魔改造(ハイリスク) | 純正パーツ(安定) |
| 食事の味 | しない | する |
| 家族の時間 | 上の空 | 満喫できる |
最後の2行がすべてだと思っている。投資のリターンよりも、日常を壊さない投資かどうか。整備士パパにとっては、それが一番大事な判断基準だった。
これから新NISAを始める人へ
証券口座の開設は、ハピタス経由にするだけでポイントが戻ってくる。僕もそうした。どうせ開設するなら、1円でも回収する。これも整備士の基本だ。
まとめ|投資は「純正パーツ」でいい
個別株で70万円失った。食べ物の味がしなくなった。家族の顔を見れなくなった。
積立投資に切り替えた。チャートを見なくなった。食事の味が戻った。家族の時間が楽しくなった。
投資で一番大事なのは「増やすこと」じゃなくて、「日常を壊さないこと」だった。
魔改造はプロに任せればいい。僕みたいな普通の整備士パパは、純正パーツで十分だ。毎月コツコツ、エンジンを回し続ける。それだけで、家計も家族も守れる。


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